フレーズ・エディター画面
『フレーズ』とは、Renoise インストゥルメントに内包され、テンポ同期や移調演奏が可能な短いノートデータの事です。
見た目も機能も、パターン・エディターの一部分をそのままくり抜いて各楽器に組み込んだような物です。

インストゥルメント・エディターに含まれる3つのタブ [Sampler], [Plugin], [MIDI], それぞれをクリックすると、左上に [Phrases] ボタンがあります。
つまり、サンプル、XRNI、VST/AU シンセ、MIDI 楽器のどれにでもフレーズ機能は使えます。
ただ、エフェクト・コマンド等も関係してくるので、やはりサンプル又は XRNI をお薦めします。
このページでは、主にフレーズ画面の各部ボタンについての解説をしています。
第一章の「フレーズでビートメイキング」のページでは、他の画面と関連させて「フレーズをどういう風に使えばいいか?」を解説しています。
構成上、内容が重複する部分もありますが、ご容赦ください。m(__)m
フレーズ画面での基本操作
基本的にはRenoiseのバターン・エディターの一部分を切り取ったような物で、よりシンプルになっています。
フレーズの編集は、パソコン鍵盤(コンピューター・キーボード)を使ったステップ入力しか出来ません(リアルタイムでの入力は出来ない)。
どうしても手弾きのフレーズを作りたい場合は、一旦パターン・エディターで手弾きのフレーズを入力してください。
それをフレーズ画面にコピペする事は可能です。
フレーズの再生/停止は Enter キーです。
エディット・モードの切り替えは ESC キー、又は画面右上の「edit off」と書かれた部分をクリックします。
一度 ESC キーを押すと画面の周りに赤い枠線が表示され、編集可能な状態になります。再度押せば解除されます。
ノートオフは Caps lock キー で入力できます。
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フレーズ画面上をマウスでなぞると色が変わって範囲選択出来ます。
更に [左Alt]キー を押しながらマウスでなぞると、コラム毎の細かい範囲選択が可能になります。
選択された範囲は、そのままドラッグ&ドロップで動かしたり、カット[ Ctrl + X ]・コピー[ Ctrl + C ]・ペースト[ Ctrl + V ]を使う事も出来ます。
あと、連続的にペースト [ Ctrl + P ] というのも覚えておくと便利ですよ。
フレーズ画面上で右クリックすると、ほとんどの機能が一覧出来るメニューが出ます。困った時は右クリック・メニューです。
フレーズ編集画面にキーボード・フォーカスがある状態ではデータ入力が優先されるので、パソコン鍵盤を弾くと、トリガーモードに関わらずインストゥルメント音だけが鳴ります(上図の赤枠の部分)。
一応、GUI 上にあるピアノ鍵盤をマウスでクリックすれば、フレーズのトリガーは可能です。
パソコン鍵盤でフレーズをトリガーしたい場合は、キーボード・フォーカスをフレーズ画面以外に移動させてください。
意外とお薦めなのは、インストゥルメント・エディターを別窓表示(デタッチ)させて、Renoise 本体とフレーズ画面をその都度クリックし直せば、フレーズの演奏とデータ入力を使い分け出来ます。
MIDIキーボードがあれば、常にフレーズをトリガー出来るので便利です。
各コラムの役割
基本的にはバターン・エディターの一部分を切り取ったような物で、エフェクト・コマンド等は共通しています。

こんな風に打ち込んだとします。(説明の為に全コラムに数値を入力しました)
C-4・・・音名。
00・・・サンプル番号。(このコラムだけは少し特殊なので、下で解説する「サンプル指定コラムの役割」を参照してください)
60・・・ボリューム(またはベロシティ)。音量を調整。00〜80で表示。
40・・・パンニング。音の左右の定位を調整。00〜80で表示(00=Left・40=Center・80=right)。
A0・・・ディレイ。1ラインを256分割し、音の微妙な発音タイミング(遅れ)を調整します。00〜FFで表示。
B00・・・エフェクト・コマンド(個別ノート用)。Bはサンプル逆再生。00で逆再生・01なら順再生。
SC0・・・エフェクト・コマンド(トラック全体用)。Sはサンプル・オフセット(途中から再生)。つまり C0/FF の位置からサンプルを再生。
注)パターンエディターで使われている数値はほとんど全てが16進法です。10進法と混同しないでください。
(ボリューム、パンニング、エフェクト・コラムのコマンドについてはコマンド表を参照してください)
各アイコンの説明

画面右上にあるプリセット・セレクター。ここに、いくつかのファクトリー・プリセットがあるので、フレーズを作る際の参考にしてください。
"Init" を選ぶと、何も入力していない初期状態に戻せます。
また、ここではフレーズのセーブやインポート/エクスポートも出来ます。拡張子は .xrnz です。

フレーズのライン数。ここでフレーズの長さを変更できます。フレーズの最大長は 512 ラインです。(右クリックで 10 ずつ変更出来ます)。

ここをクリックすればエディット・モードがオンになり、データが入力出来ます。
オンになると、フレーズ画面の周囲に赤い枠線が出ます。
ショートカットは ESC キーです。

画面左端にあるのが ノート・コラム の追加/削除用。右端にあるのが 全体用エフェクト・コラム の追加/削除用。
ノート・コラムは最大12列まで、全体用エフェクト・コラムは最大8列まで増やせます。

各ノート・コラムの上部にある "Note" という欄をダブルクリックすれば、そのコラムに任意の名前を付けられます。
また、そのコラム名の欄をマウスでつかんで左右に動かせば、コラムの並び順を自由に変更出来ます。
その下にある [PLAY] アイコンを左クリックすれば、そのコラムの音をミュートします。
右クリックすると、そのコラム以外の全ての音をミュートします(ソロ状態)。

フレーズのキー・トラッキング・オプション

フレーズ画面の右下で、キー・トラッキング・オプション「トランスポーズ」又は「オフセット」が設定出来ます。
これは何かと言いますと、鍵盤を弾いた時に、フレーズがどのように振る舞うかを決定するオプションです。
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「トランスポーズ」:
弾いた鍵盤の音の高さに合わせてフレーズが移調されて再生されます。
低い鍵盤を押さえると低い音に移調されたフレーズが鳴り、高い鍵盤では高い音のフレーズが鳴ります。
普通期待するのはこの動作でしょう。
当然、メロディー楽器に向いているオプションですが、ドラムキットに使うと思ってもみなかったフレーズが鳴り出す可能性もあります。
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「オフセット」:
鍵盤の並びを「低音側がフレーズの先頭、高音側がフレーズの最後尾」という風に見立て、フレーズの再生開始位置を押さえる鍵盤によってコントロールするオプションです。
再生時の音程は変化しません。
この「オフセット」を使う場合、フレーズのトリガーモードを「キーマップ」に切り替え、鍵盤の割り当て範囲を狭めた方が良いでしょう。
そうしないと鍵盤の数が多過ぎて、一体どこから再生が始まるのか把握出来なくなってしまいます。

サンプル指定コラムの役割
ドラムキットのフレーズを「トランスポーズ」でトリガーする場合、ベースノート以外の鍵盤を押さえると、各ドラム構成音が入れ替わってフレーズが鳴ってしまうでしょう。
(ドラムキットは、1鍵盤に1つのドラム音が割り振られているので、フレーズ演奏で移調すると、ドラム音自体が入れ替わってしまいます。)
その偶発性が面白いフレーズを生み出す事もありますが…。
ですが時には、フレーズのドラム構成は変化せず、各ドラム音のピッチが押さえる鍵盤によって移調される、そういう風にドラムフレーズをトリガー出来たらいいと思いませんか?
それを叶えてくれるのが "サンプル指定コラム" です。
フレーズ画面の下にあるツールバーの左端に "Sample" と書かれたボタン [##] があります。
ここをオンにすると、フレーズ画面に サンプル指定コラム という特別なコラムが出現し、1つ1つのサンプルを鍵盤全体の音域で直接トリガーする事が可能になります
(内部的には、キーゾーン画面の情報が完全に無視されるんだそうです。
それによって、1つ1つのサンプルが鍵盤全体に反応するようになるらしい。)

フレーズのバリエーションの作り方
1つのインストゥルメントには、複数のフレーズを登録する事が出来ます。
まず1つのフレーズを完成させれば、後は元のフレーズに少しずつ変化を加えて別のフレーズとして登録していきます。
また、Renoise のパターン・エディターで "Zxx" コマンドを指定して、自由にフレーズを切り替える事も出来ます。
その気になれば、フレーズだけで1曲を完成させる事も十分に可能です。
フレーズの複製
フレーズ画面右下にあるフレーズ・バンク画面で、複製したいフレーズの番号を選択状態にして、右クリック・メニューの "Duplicate" をクリックすれば、
元のフレーズ内容をコピーした新しいフレーズが生成されます。
例えばドラムキットやスライス・サンプルを使っている場合、サンプル指定コラムのオン/オフやキートラッキング・モードを切り替えるだけでも大きな変化が生まれます。
単にコラムを1つミュートするだけでも新しいフレーズとして登録する価値はあります。
少しずつでも変化を加えて新しいフレーズを増やしましょう。

フレーズのトリガーモード
この図の [1] の部分がフレーズのトリガーモード切替ボタンです。ここでフレーズのオン・オフを切り替えられます。
このフレーズのトリガーモードは、Renoise のパターン・エフェクト・コマンド "Zxx" や、外部からの MIDI プログラム・チェンジ信号でも切り替える事が出来ます。

[ Off ]・・・フレーズ機能が無効になります。(つまり、元々のインストゥルメントの音が鳴ります)
エフェクト・コマンド "Z00"、プログラム・チェンジ "0"。
[ Program ]・・・フレーズ機能が有効になり、[2] のフレーズ・バンク画面にあるフレーズ番号をクリックすれば、次々とフレーズを変更出来ます。
エフェクト・コマンド "Z01〜Z7E"、プログラム・チェンジ "1〜126"。
[ Keymap ]・・・1つの鍵盤上に複数のフレーズを割り当てる事が出来るモード。
フレーズ・バンク画面からマッピングしたいフレーズを鍵盤上部にドラッグ&ドロップして割り当てます。
(マッピングしていない音域では、元々のインストゥルメントの音が鳴ります)
エフェクト・コマンド "Z7F"、プログラム・チェンジ "127"。
もし MIDI コントローラーをお使いの場合は、プログラム・チェンジ信号を送信出来るようにしておけば、鍵盤を弾きながらフレーズのオン・オフ、又はフレーズ切替も簡単に出来て便利でしょう。
下図はツマミにプログラム・チェンジ信号を割り当てた例ですが、パットやボタンに割り当てて使うと便利かもしれませんね。

フレーズをパターン・コマンドで操作する
フレーズは、パターン・エディターにエフェクト・コマンドを入力する事で、まるでサンプルと同じように扱う事が出来ます。
まず既に書いたように [Zxx] コマンドでフレーズを切り替え出来ます。
フレーズを途中から再生したい場合、パターンエディターで [Sxx] コマンドを使います。
フレーズに使う場合は「ライン数」を指定します。
例えばトータルで 16 ラインのフレーズを真ん中から再生したい場合、パターン・エディター側にコマンド S08 を入力します。
リズムを逆再生したい場合、パターン・エディターで [Bxx] コマンドを使います。
ピッチ系コマンド [Uxx], [Dxx], [Gxx] 等を使うのも面白い効果が得られるでしょう。
音量系コマンド [Ixx], [Oxx], [Txx] 等も効果があります。

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